
『RAKUEN』
モルディブの空港は、細長い島に滑走路があるだけだ。道があったり、町があったりという島ではない。ホテルに行くには、ボートに乗るしかない。
ボートで走っていると、島の見え方がおもしろい。はじめヤシの木が2,3本ちょこっと水平線にかすんで見える。そのうち5本、10本と見えて、砂浜がないのかと思うと、近づくにつれて、白い砂が浮いたり、沈んだり見えてくる。地球が丸いせいだ。(写真集後書きより)
写真集「RAKUEN」。
三好和義はこの写真集で、木村伊兵衛写真賞を受賞した。同賞は写真界の芥川賞と言われ、現在も日本の写真界において絶大な影響力を持つ。それを当時最年少で受賞した作品「RAKUEN」。モルディブとセイシェルというインド洋に浮かぶ島国を舞台にした写真達、空に鳥が歌い、水面に夕陽がたなびく。
ページをめくっていて私の鼻は気づいた。写真から「南国の香り」がしているのだ。「木になったまま熟したバナナは、バターをたっぷりつけたトーストのようだ」と語る三好の、その味覚が捉えた景色は熟れたバナナのようにとても甘い。